「医学・科学の視点、立場で国民の健康と社会をよくする運動に携わる」という理念に基づき、病体生理研究所はスタートしました。
病体生理研究所 創設者 故 秋元寿恵夫 |
◆当研究所は1949年、終戦直後の荒廃した医療状況を傍観できなかった故秋元寿恵夫(1908-1994)により、正確な臨床診断は各種試験検査の成績をまって初めて下せるとする立場から、病変を動的にとらえる病体生理学に各種試験検査を取り入れることをかかげて創設されました。当研究所の名の由来もここにあります。
◆秋元は後に「私は医療における科学性の追求について一つの信念をもっていました。すなわち診断の際、臨床所見と並んで適切な試験検査が重要であり、それなくして科学的な真の診断とはいえないこと、また、医療はその基本において正しい倫理観の上に導かれるものでなければならないこと、そして、極めて高度な総合された科学を要求されるものであることを提唱して止まなかったのであります」と創設の頃を顧みています。
◆その言葉の通り、彼は臨床検査技師の社会的地位の確立のために力を尽くし、また非戦・非核の平和運動に生涯を捧げ、幾多の著書・訳書を残しました。その純粋無私な情熱は今日の研究所に受け継がれ、社会保障制度の拡充や非核・平和運動に加わり、また各種の研修会やセミナー、臨床研究への助成、学術刊行物の発行など、継続事業を旺盛に行っています。
年 | 歩み |
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1949 | 秋元研究所として設立 |
1952 | 病体生理研究所に改名 |
1964 | 「病体生理」誌創刊 |
1965 | 板橋区熊野町に移転 |
1966 | 衛生検査技師学校設立 |
1973 | 新日本臨床検査技師学校に改称 |
1974 | 財団法人東京保健会となる |
1984 | 「母と子の健康」誌創刊 |
1986 | 母子保健シンポジウム開始 |
1989 | 新日本臨床検査技師学校閉校 |
1993 | 健診サポートシステム稼動 |
1995 | 全自動受付処理システム稼動 |
2000 | 遺伝子関連検査(PCR)開始 |
2004 | ISO9001:2000認証取得 |
2007 | 総合臨床検査システム更新・農民運食品分析センターと運携事業開始 |
2009 | 健診WEBシステム稼動 |
2010 | 環境発がん研究センター設立 |
2013 | 一般財団法人東京保健会に移行 |
2015 | 板橋区大谷口上町に移転 |
2016 | ストレスチェック支援代行業務開始 |
2019 | ISO15189:2012認定取得 |
2020 | 創立70周年記念式典開催 |
血液学的検査は血球計数測定や白血球分類、凝固・線溶反応などを調べる検査です。血液疾患の中には、緊急に治療や処置の必要な疾患があります。そのような疾患が疑われる場合、緊急報告を実施しています。 また、治療や経過観察、判断の元となるために、臨床に有用なコメントをお届けしています。
生化学的検査は、血液や尿に含まれる蛋白質・酵素・脂質・糖質・電解質などの成分を検査します。また、免疫学的検査は抗原抗体反応を用い、感染症や内分泌、自己抗体などを検査します。 精度の向上、報告の迅速化を図ると共に、より微量の検体で検査できる最新機器を導入し、採取時の負担を軽減しています。 今日の検査では、主体となる分析装置の保守管理も非常に重要ですが、検査技師に求められるのは、「データを読む、解釈する」力量だと確信しています。
微生物学的検査は喀痰・尿・糞便・血液など多種類の検体を用いて、感染症などの起因菌を検出し特定する検査です。従来の培養同定のための細菌検査からは様変わりをしてきました。 抗生物質に対する耐性菌の出現に伴い、より効果のある抗菌剤の選択には薬剤感受性試験が有用です。医療関連施設には感染対策に有用な多剤耐性菌情報や薬剤感受性統計を提供しています。
尿検査は、蛋白や糖など尿中成分の定性・定量的な測定や、尿沈渣において血球類や細胞類、円柱などの尿中有形成分を観察する検査です。糞便検査は大腸がんの早期発見に有用な便潜血検査や、人体に病害を与える寄生虫(卵)や原虫を検出・特定する検査です。海外渡航者の増加、生活様式の変化、食の多様化、愛玩動物の増加などにより寄生虫疾患は近年増加してきているといわれています。
病理学的検査は、病理組織検査と細胞診検査に大別され、体の一部から採取した組織や細胞を顕微鏡で観察し、良性・悪性・異型の度合いを調べる検査です。この検査により病気の診断確定や性質の判定に繋がり、治療方針の決定や治療効果などに利用されています。
遺伝子関連検査は感染症の原因となる細菌やウィルスなどの遺伝子を直接増幅し、対応する標識物と反応させることで、短時間にそして確実に感染症の細菌やウィルス自体を特定します。 今後も急速な進歩が考えられる分野です。